スマホ商品化をわが社が手探りで始めてから足掛け9年、念願だったスマホ商品化自動化ラインが稼働し始めた。
最初、これからは自動化が中古スマホ処理の肝になると構想を語ったものの、
「1台ずつ状態が違う中古スマホを自動化ラインに乗せることはできない」
「無茶だ」
とさんざんに言われた。構築に掛かる資金の大きさも相まって、私の「妄想」と社内外から白い目で見られてきた。
完成すると、ようやく、「時代を先取りした『構想』ですね」と、周りで言ってくれる人が出てきたのは本当に嬉しい。
そこで愛称をCDREMの会社略称をもじってC-DreAmと名付けた。
このC-DreAmを操作するすべてのスタッフの作業着は白衣とし、今後弊社は技能重視の会社となってクリーンな環境で作業を行うことを印象付けようとしている。
もともと、なぜこのような「妄想」を抱いたかと言えば、中小企業の意地を見せてやろうと思ったからだ。
世の中、DXだAI だと喧しいが、我々のような中小企業がこのような機械化による飛躍的な生産性向上を狙っても、悲しいかな下請けの身では、派遣会社を使い仕事の繁閑の差に対応し、コストダウンは容易だ、と信じ込んでいる大手発注先には、一時的にはコストアップになる機械化を飲んでもらうことは難しく、多くの中小下請けは諦めてしまっているのが現実ではないか。
むしろそんな金があるなら値引きしろと言われてしまうのが落ちだ。
私の当初の「妄想」はもっと気宇壮大で、商品化ラインを自動化するのみならず在庫出荷まで連動した自動化システムを構築、スマホ商品化の流れを1台ずつ個別管理で徹底把握、生野菜の市場に似て市場価格変動が激しい中古スマホマーケットで、市場変動を読み込んで市場価格ピークのものから出荷が可能となる全体システムを作りたかったのだが、予算が足りず、ここで止まってしまった。
誠に残念である。
何故、今、自動化なのかというと、もう一つ理由がある。現場が元気で新しいアイデアが出てくるうちに機械化構想に取り組まないと、現場ノウハウを取り入れた効率的なラインを構築できないと強く感じていたからである。
たいていの場合、ビジネスが下り坂になり現場ノウハウが流失してから慌てて自動化に取り組む。しかしそれでは何の取柄もない機械化ラインに終わってしまう。
今回は切れ味のいい新鋭のノウハウを自動化に取り込んでみたつもりだ。特に外観検査にはAI を導入し、ぶれない正確な検査結果が出せるように図っている。
とはいってもその道のりは容易ではなかった。
本格的に取り組んで4年、コロナにぶつかってしまい技術提携先のフィンランドの会社との行き来も、意思疎通もままならず、当初1年半で完成する予定が、なんと足掛け4年となり、結局ほとんど自社で開発しなければならなくなった。
おかげで我々のメンバーも成長したのは思わぬ成果だった。システムを担当してくれた社員には本当に感謝している。
自動化機械が完成すると時を同じくして、世の中は、人手不足が深刻化した。これまで、単に人件費の低さだけを頼りに、この仕事を受けていたところは、どこも急速に苦しくなっていると思う。
当社も例外ではなくこの波をまともに受けているが、この自動化機械を早く一人前に立ち上げ、生産性が低くどうにもならないと言われた中古処理業界の生産性を技能で向上させ、人手不足に対応、業界に新風を吹き込みたい。
もっと言えば、現場の人から退屈な繰り返し作業を解放してやり、もっと付加価値の高い作業を引き受けてもらいたいと思っている。
さてどうなるか?これは構想と、世間には認めてほしい。